激動の2017年・東南アジアのテロ情勢 (4)マレーシア

   

スポンサーリンク

マレーシア

9.11同時多発テロ以降もマレーシア国内では大規模なテロ事件は発生しておらず、東南アジア諸国の中でも治安が良い国としてのイメージが日本人には先行しているが、

近年ISの拡散は同国内のテロ情勢にも大きな影響を与えている。

ISの指導者バグダディによる一方的な建国宣言以降、マレーシアでは首都クアラルンプールやその近郊を中心に、ISのブランドやイデオロギーの影響を受け逮捕される者が相次いでいる。

マレーシア治安当局の発表によると、2013年から今日までの間にテロ関連容疑で260人以上が逮捕され、少なくとも14件のテロ事件が未然に防止されたとされる。

昨今の事例として、例えば2016年1月、マレーシア治安当局はクアラルンプールにあるアウトレットモールで自爆テロを計画した容疑で男1人を逮捕し、

また首相を含む政府高官を拉致するジハーディストグループによる計画を未然に防止した。

さらに2016年6月、クアラルンプール近郊のプチョンにあるナイトバーで手榴弾が投げ込まれ、8人が負傷する事件が発生したが、

この事件の実行犯らはシリアで活動するISのマレーシア人戦闘員ムハマド・ワンディ・ モハメド・ジェディ(Muhammad Wanndy Mohamed Jedi)と連絡を取り合い、

直接指示を受けていたとされ、治安当局もマレーシアで発生した初めてのIS関連事件と判断した。

マレーシアにとって脅威となるIS戦闘員の帰還

一方インドネシアと同じようにIS戦闘員の帰還はマレーシアにとっても深刻な脅威で、

これまでに110人以上がシリア・イラクのISに参加し、中には人質の殺害や自爆テロ要員になる者もいるとみられる。

また近年でもISに参加するためシリアへ渡ろうとする者も後を絶たず、シンガポール・南洋工科大学のテロ研究機関ICPVTRが先月公開した情報によると、

それを試みて逮捕される者が2015年には82人であったのに対して、2016年は112人と30人も増加したとされる。

そして昨今フィリピン南部のミンダナオ島やバシラン島、スールー海域でISに忠誠を誓うグループの活動が目立つようになっているが、

ISの弱体化でシリア・イラクへの渡航が現実的に難しくなっている中、マレーシアではIS支持者たちがフィリピン南部へ渡航し、

国内の過激派要員とネットワークを確立した後テロを起こすことが懸念されている。

スポンサーリンク
和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

 - 社会ニュース , ,