激動の2017年・東南アジアのテロ情勢 (2)インドネシア

      2017/02/07

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インドネシアのイスラム教過激派組織「ジェマー イスラミア」

インドネシアは9.11同時多発テロ以降、2002年10月のバリ島・ディスコ爆弾テロ事件(202人死亡、約200人負傷)をはじめ、

2003年8月のジャカルタ・米系ホテル爆弾テロ事件(12人死亡、約159人負傷)、2004年9月のジャカルタ・豪大使館爆弾テロ事件(9人死亡、約150人負傷)、

2005年10月のバリ島連続テロ事件(23人死亡、100人以上負傷)、2009年7月のジャカルタ・米系ホテル爆弾テロ事件(9人死亡、50人以上負傷)など、

イスラム過激派組織ジェマーイスラミア(JI)によるテロ事件に長年悩まされてきた。

転機となった2016年1月のジャカルタでのテロ

そして2009年7月のテロ事件以降、JIの弱体化も相まって国内では大規模なテロ事件は発生してこなかったが、ISの台頭によってその情勢は大きな転換期を迎えることとなった。

その転換期となったのが、2016年1月のジャカルタでのテロ事件である。

2016年1月14日、ジャカルタ中心部タムリン通り沿いにあるショッピングモール「サリナ・タムリン・プラザ」付近で襲撃と自爆による一連のテロ事件が発生し、実行犯4人を含む8人が死亡、23人が負傷した。

この事件後、IS系の通信社が「IS戦闘員が攻撃した」との犯行声明を出したが、実行犯らは2015年に監獄島とも言われる「ヌサ・カバンガン刑務所」を3回訪れ、

イスラム聖職者でISを支持するアマン・アブドゥラマン(Aman Abdul Rahman)受刑者と面会していた。

またシリアで活動するインドネシア人のIS戦闘員バルン・ナイム(Bahrun Naim)も、この事件の実行犯らと連絡を取り合い、事件の立案、指示、資金の提供などを具体的に行っていたとみられる。

上記事件は東南アジアにおけるはじめてのISによるテロとして注目を集めたが、2014年6月以降インドネシア当局はISによるテロ事件がいつ国内で起こっても不思議ではないと強い懸念は示していた。

「ジャカルタ後」相次ぐテロ事件

そして同事件以降今日まで、インドネシア国内では数人のグループや個人による小規模なテロ事件(未遂含む)が断続的に報告されている。

シンガポール・南洋工科大学にあるテロ研究機関ICPVTRが今月発表した分析によると、

インドネシア当局は2016年に少なくとも15件のテロ事件を未然に防ぎ、150人以上をテロ関連容疑で逮捕したとされる。

最近の事例としては、例えば去年11月国家警察はミャンマー大使館や国会などを狙った爆破テロを計画したとして、

ISがインドネシア国内のイスラム過激派組織を統合する目的で2015年3月に結成したとされるテロ組織「ジャマー・アンシャルット・ダウラット(JAD)」のメンバー3人を逮捕した。

また同月、カリマンタン島・東カリマンタン州の州都サマリンダ市で発生したキリスト教会火炎瓶テロ事件で、対テロ特殊部隊(Densus88)は実行犯の男を含む容疑者計5人を逮捕し、

その5人はJADのサマリンダ支部に属していたことが明らかとなっている。

2017年のインドネシアのテロ情勢の展望

インドネシア

テロ対策を担当する政治・法務・治安担当調整相に今年就任したウィラント氏は、元軍人だ。(出典:同氏Facebook)

一方、シリア・イラクのISに参加し同国へ帰還する戦闘員の問題も世界的に深刻な問題となっているが、

去年10月国内の治安対策の最高責任者であるウィラント政治・法務・治安担当調整相は、ISのシリアなど中東地域での活動に参加し、

その後様々な理由から帰国したインドネシア人が計53人に上ることを明らかにした。

同国の対テロ特殊部隊の能力は非常に高く、米国や豪州などからの評価も非常に高いが、SNSの普及、また国内の社会経済的な問題も相まって、

今後とも同国ではISに影響された少数グループ、また個人による単発的な、無計画的なテロ事件が発生することが考えられる。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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