激動の2017年・東南アジアのテロ情勢 (1)フィリピン

      2017/02/07

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はじめに

去年10月にイラク軍らによるモスル奪還作戦が開始された。過激派組織イスラム国(IS)の最後の要衝とされるだけに、モスルの奪還はISにとって大きなダメージとなるだろう。

しかし組織としての能力が衰えたとしても、ISという脅威がなくなるかといったら、答えはNoだ。

この1年の間に欧州を中心に各地でISによるとされるテロ事件が相次いだ。もちろん全てがISの中枢が関与した事件ではなく、

昨今の事件等は”Directed Attack”(IS幹部、IS戦闘員が指令・関与したテロ)、”Inspired Attack”(文字通り影響、感化され自発的に行うテロ)に分けられる。

そしてその影響は上記のテロ事件として日本にも地理的に近い東南アジアのテロ情勢にも大きな影響を与えている。

ではどのような影響が出ているのであろうか。ここではその影響が表面化しているフィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ミャンマーの計6カ国のテロ情勢について観ていきたい。

フィリピン

他のアジア諸国への波及効果も

東南アジアのテロ情勢を観るにあたってまず指摘しておかなければならないのは、昨今フィリピン南部の情勢は非常に深刻で、

それは同国だけでなく、インドネシアやマレーシアなど他の東南アジア諸国のテロ情勢にも大きな影響を与える可能性も排除できない。

2014年7月、アブサヤフの最高幹部イスニロン・ハピロンはISへの忠誠をYouTube上の動画の中で宣言したが、IS側もハピロンをISのフィリピン支部の首長(Emir)に任命し、

2015年12月にはISに忠誠を誓った4つの組織、すなわちアブサヤフの他に、Maute Group, Ansar Khilafah Philippines(AKP), Bangsamoro Islamic Freedom Fighters(BIFF)を紹介する動画を公開した。

これら組織は既存の組織から派生したものもあるが、その多くはこの1〜2年の間に結成されたもので、他にも名前を聞いたことがないような組織も台頭している。

2016年、立て続けに起こった悲劇

そしてその脅威は去年爆弾テロ事件として現実のものとなった。2016年9月、ミンダナオ島ダバオのある夜市場で爆弾テロ事件が発生し、14人が死亡、60人以上が負傷した。

この事件を実行したのは前述の4つの組織のうちのMaute Groupであるが、同組織は100人程度のメンバーで構成され、ハピロンが指揮を執っている。

また去年11月には首都マニラにある米国大使館近くで爆弾装置が発見される事件があり、マニラ当局は事件に関与した容疑で2人を逮捕したが、その2人はISへ忠誠を表明しているAKPに属していたとされる。

AKPは去年4月、フィリピン政府と駐留する米軍兵に対して自爆テロ攻撃を行うとする声明を公表していた。

さらに南部バシラン島などではフィリピン軍とアブサヤフとの戦闘も昨今激しさを増しており、去年4月に同島で発生した戦闘ではフィリピン軍の兵士23人が犠牲となった。

東南アジアでのフィリピンの重要性

そしてISの中枢がシリア・イラクで組織的に弱体化する中、昨今フィリピン南部のようにISの地域支部の存在の重要性が増しており、

IS側もシリア・イラクへ足を運ぶことができないのであればフィリピン南部へ向かえとする声明も出しており、今後インドネシアやマレーシアなど周辺諸国からISの支持者たちが同地域へ向かうことを試み、

フィリピン南部を中心とした東南アジアのテロ情勢が悪化する危険性もある。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。他に岐阜女子大学特別研究員を務める。

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