欧州における右派主義の台頭(後)|世界のテロの「現在」

   

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反政府勢力の拠点だったアレッポが陥落したシリア。爆撃によって家や故郷を失った5万人の市民の移送が再開された。

シリア難民の大部分の受け入れ先となっているのが、ドイツをはじめとした欧州諸国だ。

しかしながら、この欧州において、移民やイスラム教徒へのヘイトクライムが近年相次いでいる。

高揚する対立。2017年の欧州はどのような政治的・社会的運命を辿っていくのだろうか。

世界のテロの「現在」を、欧州での右派主義の台頭を、清和大学/オオコシセキュリティコンサルタンツの和田大樹氏に話を聞いた。

前回記事

欧州における右派主義の台頭(前)|世界のテロの「現在」

欧州各国の国内情勢から見える「危機感」

そしてその危機感は欧州各国の国内情勢を探るとより分かりやすい。

例えば11月下旬にオーストリア内務省が明らかにしたところによると、内戦から逃れたシリア難民の亡命者などを保護する施設への嫌がらせが国内で増加傾向にあり、

今年上半期に報告された事件は24件で既に2015年中に発生した全件数とほぼ並び、

以前はネットなどのオンラインで亡命者を誹謗中傷するヘイトクライムが多かった一方、昨今は脅迫や放火、具体的な言葉の暴力などが目立っているとされる。

2016年に入りシリア難民による単独的なテロ事件が相次いで発生したドイツでは11月、治安当局がISとの繋がりが疑われる全国のモスク、住居、事務所など約200ヶ所で一斉捜査を行い、

イスラム原理主義団体「真の宗教(DWR)」に対して解散命令を出すケースがあった。

また欧州各国の政治に目を向けても、フランスやオーストリアの他にもドイツやポーランド、ハンガリーなどでは移民・難民政策に異議を唱える右派政党が議席を増やし躍進している状況である。

米・トランプ政権が欧州の過激主義を勢いづかせるか

trump トランプ 大統領

(出典:トランプ氏Facebook)

さらにそれに拍車を掛けるのが米国トランプ政権の誕生で、周知のようにトランプ氏は米国第一主義を強く掲げ、大統領就任以降も移民・難民政策では厳しい対応をすることが予想されるが、

それが白人至上主義者やキリスト教原理主義者を勢いづかせることが懸念される。

例えばドイツ情報機関は11月、国内の極右勢力が米国や他の欧州諸国の右派勢力と連携して国際的なネットワークを構築し、より過激な行動に出る可能性があると懸念を示した。

2017年の国際社会の展望

ノルウェー 連続テロ事件 オスロ

「ノルウェー連続テロ事件」政府庁舎が爆破されたノルウェー首都・オスロ

このような右派主義的傾向が短期的に欧州各国で爆発することは考えにくいが、このまま“内にある不満”がさらに蓄積されてことは決して欧州の未来にとって良いことではない。

右派的傾向が大衆的に膨らんでいく動きへは政治的な牽制が掛けられると思われるが、ブレイビク事件のようにそれを標榜する者が突然単独的な暴力に出ることは常に考えられ、

仮にそれが今日の欧州で発生すると、それはブレイビク事件時以上に深刻な政治的、社会的、心理的ダメージを発生させるだろう。

既に12月になり今年も終わりが近づいてきたが、残念ながらおそらく今日の欧州でのこの傾向は2017年も続くだろう。

そして来年にはフランス大統領選挙(4月下旬から5月上旬)、ドイツ連邦議会選挙(9月)などが予定されているが、

右派勢力が勢いを増す中この欧州の2つの大国の政治動向には注視する必要があるだろう。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。他に岐阜女子大学特別研究員を務める。

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