検証・トランプ政権とイスラム国|トランプはどうジハーディストの脅威に立ち向かうのか?(下)

   

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(上)では、ISの組織的弱体化=テロの脅威衰退ではないこと、ISなどジハーディスト集団に対するトランプ氏の考え方について述べたが、ここでは上記タイトルについてもう少し考えてみたい。

(上)でも触れたように、トランプ氏は米国第一主義で、米国の国益にならないことには非常に消極的な姿勢を示す一方、その安全を脅かす脅威などについては断固とした姿勢で臨むことが予想される。

特にトランプ氏はISについて、「オバマがISILを作った」、「アサドの退陣を促すより、ISの打倒に専念すべきだ」などと発言し、ISの根絶は米国の安全保障にとって”Must”なものと捉えている。

オバマ氏も2011年5月にアルカイダの指導者ビンラディン容疑者を殺害することに成功するなど、ジハーディストグループに対しては厳しく対応してきたが、

テロとの戦いにおける”Light Footprint Strategy”(足跡をほとんど残さない戦略)の採用とアジアへの回帰(Pivot to Asia)を進め、軍事的重心を中東からアジアへシフトさせる戦略を採った。

しかしその後米国の関与が減少した中東ではイラクの宗派対立やシリア内戦が深刻化し、それがISの台頭を大きく助長する結果となり、

さらにはその脅威が中東を中心に欧米やアジア、アフリカに拡散する“テロの拡散”、さらにいえば“テロのトランスナショナル化”に拍車を掛けることになった。

カリフォルニア・オーランド銃乱射事件…過激派のテロはもはや海の向こうの出来事ではない

そしてそのトランスナショナル化は、イスラム過激思想に感化され自発的、個別的にテロを試みる、いわゆるローンウルフ型テロの脅威に直面してきた米国社会に新たな恐怖を与えた。

2015年12月のカリフォルニア・サンバーナーディーノ銃乱射事件(14人死亡)、2016年6月フロリダ・オーランド銃乱射事件(49人死亡)のように、

ISのブランドにインスパイアーされた個人による事件が断続的に発生する今日の米国にとっては、イシューとしてのテロは、外交問題でありながら国内の治安問題になっているのである(国際問題の国内化)。

よってこの国際問題の国内化が米国民を深く悩ます種となっており(実際世論調査によると、大統領選における米国民が最も重視する事項は“経済”と“テロ”)、

また米国第一主義を掲げるトランプ氏がISや国内の移民政策などテロに関連する諸問題に対して強硬な姿勢を見せる源になっている。

この国際+国内という二面性を持つイシューにうまく対処することは非常に難しい。

しかしトランプ氏は国際面ではロシアなどと協力してISの破壊を目指し、国内面では移民などに対してより厳しい対応をとっていくことが考えられる。

※2016年11月18日時点での筆者の見解である。

(上)はこちら

検証・トランプ政権とイスラム国|トランプはどうジハーディストの脅威に立ち向かうのか?(上)

和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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