検証・トランプ政権とイスラム国(上)トランプはどうジハーディストの脅威に立ち向かうのか?

   

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欧米諸国が恐れるIS 現代技術を利用して巧みに生き残る

2014年6月の一方的な建国アピール以降、過激派組織イスラム国(IS)の脅威はパンデミックのように拡大し、近年欧米諸国は一種の”IS Phobia”(IS恐怖症)に陥っている。

そして今日ではISの最大の拠点モスルと、ISが一方的に首都と定めるラッカの奪還を目指す軍事作戦が展開され、領域支配を売りにここまで拡大・拡散したISは窮地に追いやられている。

だがモスルやラッカを奪還されたのみを持ってISの脅威がなくなるかといえば、話はそう単純ではない。

人類の歴史は戦争の歴史でもあるが、近代国家における戦争とは国と国との間の争いで、武力で鎮圧された国は政治経済的に弱体化し、その安全保障上の脅威は弱まるのが自然であった。

しかし現代技術を巧みに利用して今日のように至ったISという脅威は、もともと一定の領域をコントロールする存在ではなく、イラク戦争や米軍のイラクからの撤退、アラブの春とシリア内戦など中東の動乱を潜り抜ける中で近年のように至ったのであり、売りにしてきた領域支配を失った後も”terror group”として残るだろう。

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ISがなくなってもテロの脅威はなくならない

ちなみに領域支配を失ったら、世界のジハーディスト(聖戦主義者)内でのブランド力が低下し、過激化する若者を引き付けるマグネットとしての磁力も弱まり、アルカイダへの再傾斜が起こることは1つの可能性として考えられる。

しかし、ISとアルカイダの対立のようにジハーディスト内でのブランド合戦は生じても、安全保障的側面から観ると、テロの脅威は何ら衰退しているわけではない。

トランプはどうテロの脅威に立ち向かうのか?

そのような中、今後の米国の4年間を担うトランプ氏はこの脅威にどう対処していくのだろうか。

大統領就任が決まって2週間足らずの段階で確実なことは言えないが、トランプ氏は米国第一主義を掲げ、オバマ氏よりもイスラム教徒へ強硬的である。

またオバマ氏がイスラムとテロを区別し、今日のISなどの原因を政治的、社会経済的側面に位置付けているのに対し、現在までのトランプ氏の発言を観ていると(11月17日の時点で)、その原因をイスラム教という宗教そのものに位置付けているような傾向が読み取れる。

よって大統領就任後もこの態度を貫いていると、ジハーディストとの“思想戦”の対立がさらに高揚し、アルカイダやISの思う壺になってしまう危険性がある。

事実昨今のジハーディスト系ツイッターを観ていると、トランプ勝利を大いに喜び、これを好機に捉えている感がうかがえる。

そしてここで指摘したように、トランプ氏は米国第一主義を強く掲げており、アルカイダのようにまず米国への攻撃を重視する存在に対しては断固として態度で対応することが考えられる。

益々複雑化するテロ情勢の中、トランプ氏がどのような対テロ政策を実行するのか、それ次第でテロ情勢は大きく変動する。今後の情勢を常に注視していく必要がある。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。他に岐阜女子大学特別研究員を務める。

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