結局イスラム国とは何なのか?(下)IS内部における現状

   

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過激派組織「イスラム国」(IS)の最大拠点・モスル奪還作戦をイラク軍は、1日、モスル市内に初めて到達した。

イラク軍部隊がモスル市内に入ったのは、2014年6月にISに制圧されて以来初めて。10月中旬に始まったモスル奪還作戦は、新たな段階に入った。

IS側は、民間人を人間の盾にして、徹底抗戦する構え。

ISの非人道的行為は戦闘時のみに限らない。イスラム教徒でない女性を性奴隷にし、子どもたちを戦闘のために訓練している。

そのような無秩序が数年にわたって許されてきたのか。そこには国家に驚くほど似た統治機構の姿があった。

世界の安全保障情勢を知る、清和大学/オオコシセキュリティコンサルタンツの和田大樹氏に話を聞いた。(3部構成・完)

前回の記事

結局イスラム国とは何なのか?(中)ISに参加する外国人“流入者”たち

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パスポートを焼き、自らの国を捨てる―強いモチベーションの戦闘員たち

図1:パスポートを燃やすフランス人戦闘員

“上”“中”の論考にあるように、ISは軍事的に弱体化する反面、他の地域にISに忠誠を誓う組織が台頭するという形で“拡散”し、

またシリアが外国人を引き寄せるマグネット的な役割を果たすことで多くの外国人が流入している。ではISが支配する中ではどのような現状があるのだろうか。

ISに流れ込み、戦闘員として参加する者の国籍は多岐に渡る。

もちろん戦闘員によってその目標や士気で違いがあるものの、彼らがユーチューブなどで流す動画からは、

戦闘に対して強いモチベーションを持っていることがうかがわれ、例えばフランスやベルギーなど欧州からやってきた戦闘員らは、

自らのフランスやベルギーのパスポートを燃やし、IS発行のパスポートを強調するなどしていた。

また戦闘員に対しては現地住民と比べて高い報酬が支払われ、そのお金を得るためにあえてISの戦闘員になる者もいるとされる。

図2:ISのパスポート

戦闘員となる子供たち、売られる女性たち

図3:ISの少年兵たち

またISの実態を探る際に一番心に痛感するのは、そこで戦闘員になることを余儀なくされる子供、

そしてISの戦闘員にレイプされたり、奴隷として売買されたりする女性の姿であろう。

図3は観れば分かるとおり、ISの戦闘員としてAK47Sのライフルを持って軍事訓練を受ける子供の様子だ。

昨今ISは支配地域の喪失とともに多くの戦闘員も失っており、その代用として少年を戦闘員として利用しているとされる。

また図4はISに奴隷として売買されるヤジディ教徒の女性の姿だ。

IS戦闘員の性奴隷となるヤジディ教徒の女性は大きな問題となっており、今年6月国連はISがヤジディ教徒約40万人を拘束し、

ジェノサイド(大量虐殺)や女性の奴隷化を進めているとすると報じた。

図4:売られるヤジディ教徒の女性たち

国家的な統治を試みるIS

図5:ISの内部構造

“上”にも書いたように、ISには国際法上の国家のような正当性は全くなく、単に武装勢力が無法地帯を占拠し、そこで勝手に統治なるものを行っているに過ぎない。

しかしその中身を注意深く見ると、如何にも国家が統治を行っているような相似が見えてくる。

例えば図5はISの権力構造を示しているものであるが、指導者のバグダディを筆頭に、

シリアとイラクをそれぞれ担当する副官2人、24人の知事が置かれる構造になっており、さらにその下には部門ごとに8つの評議会が置かれ、

武器調達や原油販売を行う財政部門、政策などを立案する指導部門、敵対勢力の情報を収集するインテリジェンス部門、

内部の治安を担当する警察部門、外国人戦闘員を支援する援助部門、広報を行うメディア部門などがある。

また裁判所や宗教警察が置かれ地元住民を監視し、課税制度も実施され地元住民はISに税を納めることが義務付けられている。

さらに上記のパスポートだけでなく、独自のお金(金貨や銀貨)の発行を打ち出すなど如何にも国家的な取り組みに挑戦している。

図6:ISの金貨や銀貨

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。他に岐阜女子大学特別研究員を務める。

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