緊張の愛憎模様、ウクライナとロシア|ウクライナ情勢の今

      2016/11/04

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2014年以降、散発的な戦闘が続くウクライナ。20日、ウクライナとロシアをはじめとしたヨーロッパ各国の首脳はドイツで会議を開き、

来月末までに、和平の実現を目指すロードマップ(行程表)を外相レベルでまとめることで合意した。

散発的な戦闘が続くウクライナ。再び戦いの惨禍が繰り返されることはあるのだろうか。

同国の歴史を紐解くとき、それはロシア抜きには語れない。

そんな対露関係から見た「ウクライナの今」を、中東欧の政治・歴史情勢に詳しいライターの新田浩之(にった・ひろし)氏に聞いた。

特別な関係 ウクライナとロシアとの関係

キエフ公国を今に伝える世界遺産に登録されている「聖ソフィア大聖堂」

キエフ公国を今に伝える世界遺産に登録されている「聖ソフィア大聖堂」

ウクライナとロシアの現在の関係を見ていく前に、両国間の歴史を簡単に確認しておきたい。ウクライナとロシアとの関係は単純に「国」と「国」との関係ではなく、特殊な関係だからだ。

ウクライナ、ロシアは共に人種的にスラブ系の東スラブ語族に属する。東スラブ語族の最初期国家のひとつが、現在のウクライナの首都キエフ周辺で生まれた「キエフ・ルーシ」である。ロシア人の多くがキエフに愛着を持つのはこのためである。

その後、ウクライナは他国に占領される時代が続いた。17世紀に左岸ウクライナが、19世紀にはウクライナのほとんどの領土がロシア帝国領になった。

ただし、この時代の住民統治はロシア人とウクライナ人の区分が不明瞭で「宗教」や「身分」に基づいて統治されていた影響で、農民層は自分達がウクライナ人なのかロシア人なのか、意識していなかった。

20世紀に入り、ウクライナはソビエト連邦の一共和国として再びロシアの支配下に入った。ソ連時代はロシア語が優勢となり、ウクライナ語は冷遇された。また、東部ウクライナには多くのロシア人労働者が流入した。

なお、ウクライナではロシアによる統治が長かったので、ロシア語を母語とするウクライナ人も多い。ただし、国内にはロシア語を母語にする人でもウクライナに愛着を持ち、ウクライナ語を話せる人もいれば、

ロシアに愛着を持ちウクライナ語がうまく話せない人も存在する。また、ウクライナ人の多くがロシア人の親戚を持つ。

このような歴史的背景から、ウクライナには「親ウクライナ」と「親ロシア」が存在する。ウクライナとロシアは切っても切れない関係にあるのだ。

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話し合いは行われるが「雪解け」にはほど遠い現状

ウクライナ西部の街、リヴィウに飾ってあった絵。ウクライナ語で「戦争のないウクライナ」と書いてある。

ウクライナ西部の街、リヴィウに飾ってあった絵。ウクライナ語で「戦争のないウクライナ」と書いてある。

ウクライナとロシアはロシアによるクリミア半島の「編入」、「親ロシア派」によるウクライナ南東部での「人民共和国」の建設、ウクライナ国内の「内戦」を巡って激しく対立している。

その中でも水面下で話し合いは行われ、2014年9月にベラルーシの首都ミンスクでウクライナ、ロシア、「人民共和国」と「欧州安全保障協力機構(OSCE)」の監視団によって「ミンスクⅠ」が署名された。

この中で、停戦の実施、南東部への自治権(特別な地位)が与えられることが決まった。2015年2月には、ロシア、ウクライナ、「人民共和国」首脳が「ミンスクⅡ」に署名した。しかし、和平プロセスは停滞し、停戦も幾度となく破られた。

2016年8月にロシアが「編入」したクリミア半島で事件が起きた。ロシア連邦保安庁(FSB)はウクライナの破壊工作員を逮捕した、と発表した。

ロシア側によると、逮捕されたウクライナ人は特殊部隊のメンバーで、クリミア半島でテロを計画した、としている。なお、ウクライナ側は、逮捕されたウクライナ人との関係を明確に否定した。

また、ウクライナはキエフ駐在のロシア大使の交代に関して事前承認を拒否した。これを受けて、ロシアのメドベージェフ首相はウクライナとの「関係断絶」に触れるなど緊張が高まった。

ようやく10月19日に仏独ロとウクライナによる4者会談が行われ、11月までに和平へのロードマップ(行程表)を作成することが決まったが、ロードマップの内容をめぐって対立することが考えられる。ウクライナとロシアとの緊張関係はしばらくは続くだろう。

1987年生まれ。神戸市出身。神戸大学大学院国際文化学研究科修了(国際関係・比較政治論コース)。専門はユーゴスラビアといった中東欧の政治・国際関係。
民間企業に勤務後、3ヶ月間の中東欧でのバックパッカー体験を経て、2016年より独立。『Compathy Magazine』『TRIP’S』など複数のメディアで活躍中。

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