結局イスラム国とは何なのか?(中)ISに参加する外国人“流入者”たち

   

スポンサーリンク

17日に、イラク軍は「イスラム国」(IS)が北部モスルを奪還する大規模作戦を開始。イラク軍の攻撃からISの戦闘員らが逃走し、隣国シリアへ向かう動きが目立っている。

ISの戦闘員のほぼ半数が外国人と言われている。いわゆるそういった「外国人戦闘員」はどこから来て、どこからやってくるのだろうか。

パリやダッカのような悲劇は再び繰り返されるのだろうか。

今回はいわゆる「外国人戦闘員」をより正確に「外国人"流入者"」として、

世界の安全保障情勢を知る、清和大学/オオコシセキュリティコンサルタンツの和田大樹氏に話を聞いた。(3部構成)

前回の記事

結局イスラム国とは何なのか?(上)支配地域を失うISと世界に拡散するIS

スポンサーリンク

ISの外国人”流入者たち”とは

ISが台頭して国際社会からの注目が集まるようになってから12月でちょうど2年半の歳月が流れるが、

ISを語る上で欠かせない大きな問題として「外国人戦闘員」がある。

新聞やテレビ、雑誌などでは外国人“戦闘員”と書かれているが、ISに参加する外国人の動機や背景はさまざまで、

また加入した後も全員が戦闘員となっているわけではないので、ISへ流れ込んだ者としてここでは外国人“流入者”と呼ぶとする。

86ヶ国からの“流入者” 国際社会が注目する以前から活動は活発に

IS流入者 戦闘員の出身地

IS流入者の出身地(出典:http://www.dailymail.co.uk/news/article-3350779/Tentacles-terror-Chilling-map-shows-31-000-mercenary-guns-hire-jihadis-86-countries-left-homes-join-ISIS-return-carry-Paris-style-attacks.html)

シリアやイラクで起きたISによるテロ事件で、例えば自爆犯が周辺のヨルダンやサウジアラビア、

また北アフリカのリビアやチュニジア、果てはインドネシアやマレーシア、オーストラリアなどからやってきた外国人であったということは

新聞やテレビを通して聞いたことがある人もいるかも知れないが、ISには多くの外国人が参加しており、いわば多国籍な武装集団といえる。

ではどこの国からどれくらいの人がやってきているのだろうか。

それについてはさまざまな統計があるが、世界のテロ対策専門家の中で広く使用されているSoufan Group(米国の安全保障コンサルティングファーム)の最新の統計によると、

2015年12月の時点で2万7000人から最大3万1000人が参加しているとみられ、出身国は86ヶ国と多岐に渡っている。

その内訳をみると、国別ではチュニジアが最多で6000人、そしてサウジアラビアの2500人、ロシアの2400人、トルコの2100人、ヨルダンの2000人と続き、

地域別では中東から8240人、マグレブ諸国から8000人、西欧から5000人、旧ソ連圏から4700人、東南アジアから900人、バルカン諸国から875人、北米から280人などとなっている。

もちろんこの数字が正確なものとは全く言えないが、重要な1つの傾向として我々は理解する必要があるだろう。

ちなみにこの統計では東南アジアから900人となっているが、その内訳はインドネシアが700人と最も多く、フィリピンの100人、マレーシアの100人となっており、

さらにウイグル族を中心に中国からも300人、そしてこの統計では非公式ながら日本からも9人が加わったと掲載されている。(以下のレポートP8を参照

そしてこれら外国人流入者たちの多くはトルコからシリア入りしたとされ、その流れはシリア内戦が勃発した2011年以降徐々に始まっていたとみられる。

要は国際社会がISに焦点を合わせる2014年以前からこの人の流れが発生していたことになる。

「逃げたくても逃げられない」IS。母国でテロが起こる?

逃げたくても逃げられない…ISに苦しむ離反者

しかし上記にも述べたように、ISへ流入する者は、冒険心を求めて興味本位でやってきた者、戦闘員の高額な給与を得るために参加する者、

シリア内戦で苦しむ同じムスリムを救済するというボランティア精神でやってきた者などさまざまで、ISに加わるうちに現実とのギャップを感じたり、

逃げたくても逃げられなくなったりすることがあることもIS離反者からのインタビューで明らかになっている。

母国でテロが起こる?IS外国人メンバーの移動をどうマネージメントするか

パリで同時多発テロの主犯格アブデルハミド・アバウド。フランスの隣国・ベルギーの移民だった。

パリで同時多発テロの主犯格アブデルハミド・アバウド。フランスの隣国・ベルギーの移民だった。

最後に、今後の外国人のISへの流入はどうなるのか。

周知のように、昨今ISは支配領域を失い、国際社会も外国人の流入を止めるべくあらゆる策を講じており、今年に入ってからその数は激減している。

例えば4月にアメリカ国防総省(ペンタゴン)は、今年に入っての1か月間における流入者の数が2015年の同時期と比べて9割も減少したと明らかにしているが、

今度は活動領域を失いつつあるISの外国人メンバーたちが、母国へ帰還してテロを実行するのではないかが強く懸念されている。

上記の図の男は、2015年11月に発生したパリ同時多発テロの主犯格アブデルハミド・アバウド容疑者であるが、

彼は同テロ事件以前から欧州とシリアを行き来し、シリアではISに参加していた。

外国人流入者の帰還や移動を今後どうマネージメントしていくか、各国の強い協力が今まさに求められている。

(下編につづく)

関連記事

結局イスラム国とは何なのか?(上)支配地域を失うISと世界に拡散するIS

スポンサーリンク
和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。他に岐阜女子大学特別研究員を務める。

Comments

comments

 - 社会ニュース ,