イラン・テヘラン同時テロ なぜISは実行したのか?

   

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事件の概要

6月7日、シーア派の大国であるイランの首都テヘランにある国会議事堂とホメイニ廟で同時的な襲撃テロ事件が発生し、12人が死亡、39人以上が負傷した。

初めに発生した国会議事堂では6日午前10時ごろ、女装した4人のグループが銃を無差別に乱射しながら議事堂内へ侵入し、一時人質を取って立て籠ったが治安当局に射殺された。

またテヘラン南部にあるホメイニ廟で発生した銃撃事件では、1人が自爆して死亡、他の2人が逮捕された。

事件後イラン当局は実行犯らがイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」と関連するクルド系イラン人であるとの見方を示した。

クルド系住民は主にイラクと国境を接するイラン西部に点在しているが、同時テロに関与したとされる複数の実行犯らは西部パーヴェの出身だと見られている。

実は多民族国家のイラン

「シーア派国家」?イランの意外な素顔

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このテヘラン同時テロについて、イランの革命防衛隊はサウジアラビアが背後に関わっているなどと外交上の側面で非難を強めたが、

その主な原因・背景はイラン国内の民族問題に根差しているとみられる。イランはシーア派国家、ペルシャ人による国家のイメージが先行しているが、

World Factbookの情報によると、そのペルシャ系はイラン国民全体の61パーセントに留まり、アゼルバイジャン系(北西部)が16パーセント、

クルド系(イラクと国境を接する北西部)が10パーセント、ロル族系(西部)が6パーセント、アラブ系とトルコ系、

そしてバルチスタン系(パキスタンと国境を接する東部)がそれぞれ2パーセントとなっている。

(以下参照 https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/geos/ir.html

多民族国家としてのイラン

要はイランは多民族国家であり、多数派ペルシャ系による少数民族への差別や抑圧は長年続いてきたが、

アフガニスタンやパキスタンと国境を接する東部、またイラクと国境を接する西部などでは若者の失業問題等も深刻な問題となっており、

それらがテロリストになる土壌になっているとみられる。

ISはそのような若者をリクルートすることを戦略的に狙っているが、イラン西部では2014年頃からISに関連する動きが見られ始めたという。

イラン国営メディアも、同時テロの実行犯らがシリア・イラクのISに合流した人物だったとの見方を示したが、

クルド系やバルチスタン系はスンニ派であることから、その中からISに外国人戦闘員として参戦している者もいるだろう。

ISは今後もイランを狙う

またISにとってシーア派は異端であることから、イランはISにとって重大な敵となる。

ISも以前からイランを狙え!とする声明を出している。またイランがISと敵対するシリアのアサド政権、シーア派主体のイラク政府をバックで支援していることから、

それもISにとっては気に食わないことだろう。今回の同時テロはISがイランで実施した初めてのテロ事件とされるが、

ISはイランを狙う強い意志は長年持ち続けてきた。今後ともイランを狙う意志を変えることはないだろう。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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