Political Pandemic(政治的大流行)と化すテロリズム

      2017/06/09

スポンサーリンク
6月3日に起きたロンドン橋暴走・刺殺テロの容疑者3名。Youssef Zaghba容疑者(画像右)は携帯電話からISに関係する資料が見つかった。

6月3日に起きたロンドン橋暴走・刺殺テロの容疑者3名。Youssef Zaghba容疑者(画像右)は携帯電話からISに関係する資料が見つかった。

2006年あたりから欧米で大きな問題となっているホームグローンやローンウルフと呼ばれる単独的なテロ事件が、昨今英国で猛威を振るっている。

日本国内の新聞・テレビなどでは、「ISが犯行声明を出した」、「ISが背後関係にあるのか」などに注目が集まっているが、

このようなホームグローンやローンウルフというテロ事件で脅威なのは、組織としてのISやアルカイダ以上に、そのブランドやイデオロギーだ。

近年は世界中のジハーディストの中で一種の”ISブーム”が起こり、それに感化される、

また自主的に共鳴する個人による単独的なテロ事件(IS inspired terrorism)が目立ってきたが、

2014年6月のIS台頭以前から、それはアルカイダに影響される形(Al Qaeda inspired terrorism)で欧米に脅威を与え続けてきた。

イデオロギーが個人をテロリストに駆り立てる

しかし、ISという領域を支配する圧倒的な存在が台頭したことにより、アルカイダというブランド(一部のテロ研究者はこれを”Al Qaeda-ism”と呼んでいる)は

陰に隠れるようになり、ISというブランドとそのイデオロギーに影響を受ける、またはそれをお墨付きにしてテロを起こす個人が次々に出現することとなった。

だが今日のテロ情勢において、ISかアルカイダかは問題の核心ではない。

より重要なのは、そのような思想(サラフィージハード主義)に影響を受ける個人の出現にどう対処するかである。

今年もラマダン期間に入ったが、その思想的脅威は後を絶たない。例えば6月5日豪州・メルボルン郊外で発生した人質立て籠もり事件で、

実行犯の男は事件のさなかに「ISのため、アルカイダのためにやっている」と地元テレビ局に電話を掛けたらしいが、

実行犯にとっては両組織以上にそれらが掲げるイデオロギーこそが重要なのである。

今日、イデオロギーこそが個人をテロリストに駆り立てているのである。

世界各地を襲う”Political Pandemic”(政治的な大流行)

長年国際テロ情勢をウォッチングする筆者は、このような昨今の状況を”Political Pandemic”(政治的な大流行)と表現している。

言葉として決して良いものではないかも知れないが、サイバー空間に拡散するイデオロギーに影響される形で各地でテロリストが出現するのである。

まさに一種の大流行的な現象が起き、我々はそれに強い脅威を感じている。

欧米を中心とする各国の治安当局は、多くのテロ事案を未遂のうちに防止しているものの、

このPolitical pandemicには現在のところ万能薬は存在しない。今後の動向に注意が必要だ。

スポンサーリンク
和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

 - 政治ニュース , , ,