コンサート会場で繰り返される事件―マンチェスターの悲劇(前)

      2017/05/26

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マンチェスターを襲った悲劇 ISはこれを「追認」か

マンチェスター・アリーナ

事件現場となったマンチェスター・アリーナは英国・欧州最大のコンサート会場。イギリスでは多くの人が犠牲者を悼んだ。(出典:Twitter[@IntolerantMano2])

マンチェスターにあるコンサート会場「マンチェスター・アリーナ」で22日、男が手製爆弾装置を起爆させ若者を中心に22人が死亡し、59人が負傷した(執筆当時時点)。

実行犯の男は、英国籍を持つリビア系移民2世のサルマン・アベディ容疑者(22)で、マンチェスター生まれで同市にあるサルフォード大学に通っていたという。

事件後、イスラム過激派組織イスラム国(IS)系のアマック通信が犯行を認める声明をソーシャルメディア上に出したが、

アベディ容疑者と組織としてのISとの具体的な関係は示されておらず、またISが示した死傷者数が実際の数と違っており、

信ぴょう性が疑われるとともに追認的な目的で犯行声明を出した可能性が高い(5月24日執筆当時)。

一方、ISの支持者らはツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディア上で、

「十字軍のイラク・シリアにおける空爆への復讐だ」、「カリフの兵士が十字軍の集まりに爆発物を仕掛け見事に実行した」など、

事件を称賛する声を次々にあげており、今後も同様の攻撃を仕掛けるよう呼び掛けている。

若者が集まるコンサート会場は最もテロに狙われやすい

ライヴ コンサート

若者でごった返す夜のクラブやライヴハウスはテロの標的になりやすい

以上が執筆時点で筆者が把握している事実関係だ。まず今回の事件現場が多くの人で賑わうコンサート会場だったということで、

筆者は2015年11月のパリ同時多発テロにおけるバタクラン劇場の悲劇を思い出す。

この時は銃を持った4人の実行犯が、米ロックバンドグループのコンサート最中にバタクランを襲撃し、89人が犠牲となった。

またコンサート会場ほど規模は大きくないが、今年の1月のイスタンブール・ナイトクラブReina襲撃テロ(39人死亡)、

2002年10月のバリ島ディスコ爆破テロ(日本人2人含む202人死亡)なども発生しており、過去の事例からも、

夜の時間帯にレジャー・娯楽などで多くの若者でごった返す場所はテロの標的になりやすい現実がある。

社会を混乱に陥れたテロリスト

次に、なぜ実行犯はこのコンサート会場をテロ現場に選んだのだろうか。

現在、治安当局は動機や背後の組織的関係を調査しているが、実行犯が自爆して既に死亡した時点で、事件の全貌を明らかにすることは極めて困難だ。

しかしそれ自体がテロリストの目的でもある。事件後をみても分かるように、一定の不安感や恐怖心というものが英国社会、

そして国際社会に漂うこととなったが、そのように社会を混乱に陥れることがテロリストの1つの目的でもある。

そうであれば、今回のテロ事件は実行犯、そして事件で犯行声明を出したISにとっては少なからずの成功を意味する。(後編に続く)

後編はこちら

「ISが衰えたから欧米でテロが増えた」は誤りだ―マンチェスターの悲劇(後)

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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