トランプ政権の北朝鮮政策の行方 極東アジアに新たな緊張関係か

   

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昨今、朝鮮半島情勢が緊迫化しているとのメディア報道が日々流れる。

といっても半島情勢は長年政治的リスクを抱えており、2010年11月のヨンピョン島砲撃事件のように、近年でも同様に緊張が高まる事態は繰り返し発生してきた。

では今回は何が違うのであろうか。普段は国際テロリズムに焦点を置く安全保障研究者の筆者ではあるが、

ここでは昨今の朝鮮半島情勢、極東アジア情勢について独自の見解を示してみたい。

攻撃の正当性得たり、トランプ政権

まずトランプ政権の誕生である。周知のとおり、トランプ氏は米国第一主義を掲げ、米国への攻撃を強く呼び掛けるイスラム国(IS)の打倒を最優先課題に挙げている。

これまでトランプ政権の北朝鮮政策は明確になっていなかったが、北朝鮮が米国を狙う“意志”を排除せず、

米本土が射程に入るICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発という“能力”を向上させていることからは、

トランプ氏が掲げる米国第一主義の観点からすると十分に厳しい対応で臨める正当性を得たことになる。また中国・北朝鮮の関係がある。

実は2011年12月に金正日が死去し、金正恩が北朝鮮のリーダーに就任して以降、中国の習近平氏との二国間会談は一度も行われていない。

それ以来今日まで両国間関係は冷え込み、中国は北への関与を低下させ、北朝鮮の孤立化と単独的行動が進むこととなった。

中国への圧力となる米国の攻撃 極東アジアに新たな緊張が訪れる

では仮に米国が北朝鮮への限定的な攻撃を開始した場合、それはどのような政治的、軍事的意味があるのだろうか。

当然ながら、それは単に米国による北への軍事的攻撃に留まらず、例えば中国にとっては極めて大きな圧力となる。米中の軍事関係の行方は、

南シナ海、東シナ海、そして西太平洋など海洋を舞台に様々な場で議論されているが、米国の北朝鮮への攻撃は北緯38度線を越えた空間で行われることから、

北朝鮮と国境を接する中国としては目の前まで米軍のプレゼンスが到来することを意味する。

中国にとって北朝鮮は米国の勢力圏の拡大を抑える防波堤的役割を担っており、今日の北朝鮮は中国の軍事戦略上も重要な存在である。

北緯38度線を越えた空間で米軍のプレゼンスが高まることは、中国として何としても避けたいシナリオのはずだ。

また仮に限定的な攻撃を行った後、トランプ政権にはどのような北朝鮮政策が描かれているのだろうか。

今まで一定だった状態にダイナマイトを投げ込むということは、何かしらの変化が起こることは容易に予想できる。

よって北への空爆後には、新たな緊張状態が極東アジアに現れるが、今月のシリア空爆においてトランプ政権は空爆後の政策を明確にしておらず、

仮に今回の北への行動でも同じようであれば、極東アジアはより不安定化し、米国による空爆の意義も問われることになるだろう。

我々日本人が考えるべきこと

北ミサイル発射_号外_2016_読売_(24587661389)

最後に、我々日本人として考えるべきことを2つ挙げたい。

まず防衛面からで、朝鮮半島で有事が発生した際、その重要拠点である米軍基地は沖縄を中心に日本各地に存在することから、北朝鮮がまず狙う場所としては必然的に日本が浮上する。

また邦人の保護の関連から、今日韓国には4万人近くの邦人がおり、朝鮮半島有事の際には如何に邦人の安全を確保し、退避させるかが重要となる。

しかし現実問題として、4万人もの日本人全員を安全に退避させることは極めて困難であることから、

企業であれば出張の延期、日本への早期引き上げ、脱出ルートの情報共有などあらゆる危機管理対策を事前に講じておくことが重要となる。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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