【特集】日本の国際化に大きな影響を及ぼす「日本語学校」 その光と闇

      2016/05/24

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「かえしてください、はんこ。わたしのです。どうして、とりますか」
「はんこをもっていると、あぶないです。だからせんせいがもっています。いいですね。」
 ワンさんは昨年の春に、中国から福岡県内の日本語学校に留学でやってきた。実家は山間部の貧しい農家で、仕送りは多くを期待できず、アルバイトをしながらの学生生活となる前提での留学だった。日本ではじめてのアルバイトは学校が紹介してくれる。初年度の学費を納めたあと、心もとなくなった家計に少しでも多くお金を入れられればと思っていた。
 アルバイト先の給与振り込み用に銀行口座を作った矢先、「印鑑は学校が預かる」と伝えられた。ワンさんが中国で説明を受けたときは一切聞かなかったことだ。

はじめに:日本の国際化に大きな影響を及ぼす「日本語学校」

 2020年に向けて、日本は急激に国際化へ歩みを進めている。とくに観光客を受け入れるインバウンド分野の伸長はめざましい。
 3月は過去最高の200万人を突破。中国を初めとした中華圏の春節(旧正月)があった2月に比べ、数字の落ち込みが予想されていたが、良い意味で悲観的な予想を裏切る結果となった。増大する観光客受け入れのために、政府は東京都大田区や大阪を特区として民泊を認めるようになったのは今年のことだ。

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 日本の国際化は、外国人観光客受け入れにおいてのみではない。日本に一定期間定住し、専門的な教育を学ぶ留学生の数も拡大してきている。JASSO(日本学生支援機構)が今年発表したデータによると、昨年度2015年5月1日時点で、留学生は数ははじめて20万人を突破。留学生拡大政策は1983年の中曽根内閣の時代から20余年の長きに渡って継続されてきた政策である。1983年当時は「留学生十万人計画」が掲げられていたが、現在はそのはるか倍をしのぐ20万人超が日本で学び、現在は「留学生30万人計画」に軸足を傾けている。

 この外国人留学生の日本留学において一定の役割を果たしているのが、日本語学校だ。その名の通り日本語を学ぶための学校で、主に外国人留学生を対象としている。日本では大学・専門学校といった教育機関において用いられる言語(教授言語)はほとんどが日本語であることから、早稲田大学などのごく一部の大学を除き、日本語で専門課程を理解するスキルが事実上必須となっている。日本語学校は、そんな海外からの留学生が基本的な日本語のスキルを身につけるための「登竜門」としての位置づけとなっている。平成26年度は、5万人程度の学生が日本語学校で学び、約7割が大学・専門学校に進学した。

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 今年1月、福岡県の日本語学校「JAPAN国際教育学院」で、留学生に法定時間を超えるアルバイトをさせていたとして、学校経営者3人が入管法違反の疑いで逮捕された。また、同じく学校側が、学生がアルバイトの給与振込みのために作成した印鑑を使って「翌年度の授業料」の名目で毎月2万~6万円をことわりなく引き出していたことも、留学生の証言によって判明。留学生に過重労働を強制し、そこで得られた給与を搾取する体制ができていた。「留学生30万人計画」を前に、このような不法就労も対処するべき課題として浮かび上がってくる。

 今回、政治プレス新聞社では拡大する留学生教育の中でも、その基礎的教育の中核となる「日本語学校」を取り上げ、その可能性や課題についてシリーズで伝える。

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統計から見る日本語学校。拡大するその影響力。

専門学校や大学進学の基礎教育機関として。

日本語学校の進路(H26)(日本語教育振興協会「平成27年度 日本語教育機関実態調査」より作成)

日本語学校の進路(H26)(日本語教育振興協会「平成27年度 日本語教育機関実態調査」より作成)

 日本語教育振興協会によると、日本語学校で学んだ留学生の進学先は、専門学校が46%とほぼ半分を占め、トップになっている。次に目立つのが4年制大学で20%、そしてその後は大学院生(正規生・研究生を含めた数字)が8%、短期大学・高等専門学校(高専)と各種学校を合計した数字は2%となる。専門学校・大学等の高等教育機関へ進学する割合が約7割であることを鑑みると、日本語学校がこれらの教育機関で学ぶにあたっての基礎的な教育を行う機関として機能していることが窺える。
 また、日本での進学を中断し、帰国した学生の数も見逃せない。かつては30%前後だったピーク時よりは減少したものの、現在も16%と見逃しがたい数字になっている。また、就職等といった進学・帰国以外の進路をとる者は全体から見て少数だ。

留学生の25%が日本語学校の学生。過去5か年でさらに存在感を増す。

 JASSOによると、留学生全体20万人のうちで日本語学校の留学生の総数は5万人超と、日本語学校の留学生が占める割合は25%となっている。日本語学校に在籍する留学生は過去5年間で飛躍的に増加した。2015年は初めて5万人を突破。

きっかけは中曽根内閣。波乱の時代を超え、過去最大規模に。

 日本語学校は1983年に中曽根内閣によって「留学生10万人計画」が発表されると、日本語学校が続々と設立され、爆発的に広がった。
 しかしながら当時はその多くが個人または商法法人による設立。学校として体裁を整えるための基準や認可制度がないなか、入学許可書さえ発行すれば、海外から学生を招くことが可能だった。
 留学や就職、ごく短期の海外旅行でも、外国への入国にはビザが必要である。しかしながら、当時は入学金や授業料を払ったのにビザが取れないというトラブルが多発。その後、法務省によるその時代のトレンドを見た規制緩和・規制引き締めが繰り返されながら、留学生の数は増減を繰り返してきた。2015年には日本の留学生の数は20万人を突破し、日本語学校に在籍する留学生も過去最大の5万人規模に達した。現在は「留学生30万人計画」に軸足を置いた取り組みがなされている。

100%アジア。中国、ベトナム、ネパールがトップ3。

日本語学校の学生数(H27)(日本語教育振興協会「平成27年度 日本語教育機関実態調査」より作成)

日本語学校の学生数(H27)(日本語教育振興協会「平成27年度 日本語教育機関実態調査」より作成)

 日本語学校の留学生の出身エリア分布はきわめて明確である。日本語教育振興協会によると、上位10か国をアジアの国が独占し、その10か国の占める割合は93.9%となっている。日本語学校で学ぶ留学生は、ほぼアジアにルーツを持つ外国人と考えて差し支えないだろう。
 トップ3の中で、1位が中国(34.7%)・2位がベトナム(30.9%)と拮抗している。中国・ベトナムに3位のネパール(12.4%)以降の国が続く形だ。

日本語学校=専門学校・大学を学ぶための登竜門。その光と闇。

 日本語学校は、専門学校や大学に進学するための基礎教育機関として、年々存在感を存在感を増している。波乱の時代をくぐりぬけた日本語学校は、統計からも、アジア人留学生にとって日本での有力な進路の選択肢となっていることが窺える。日本に来たアジア人留学生にとっての「登竜門」となる日本語学校。今後の日本全国での留学生拡大に向けて、日本語学校のもつ可能性や課題について、シリーズで伝える。

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